賃貸借契約書等の確認ポイント

賃貸借契約書(住居用)なんて面倒で中身に興味がない!」なんて思っていませんか?

不動産屋や管理会社は、「契約書に書いてあるでしょ!?」と条文を盾にすることがあります。きちんと理解しないでサインをしてしまうと、「サインしたでしょ!?」と言いくるめられてしまいます。

 

そんなことにならないように、「賃貸借契約書(住居用)」について、確認すべきポイントを少し砕けた表現でご説明します。

 

賃貸借契約を結ぶ際には、事前に契約書のひな型を送ってもらい、下記のポイントに注意しながら、不利な部分があれば交渉し、それが我慢ならないものなら、契約書にサインをするのをやめましょう。

ここでサンプルとして使用するのは、全日本不動産協会がテンプレートとして公開している賃貸借契約書(PDFはこちら)です。

 

賃貸借契約書段落イメージ

 

1 標記(頭書)部

 

まず、募集時に記載されていた内容と異なっている点がないか確認します。たまに賃料と管理費の内訳が変わっていたりすることがあるので、注意します。

一番注意して読まないといけないのは「特約事項」です。文字通り、通常の契約では収まらない、特別な事項が記載されています。

 

2 条文

 

第1条 (目的物)

→条文そのままの内容なので省略します。


第2条


更新料に不服がある場合には、「申込み」の段階で交渉しましょう。

 

第3条


事務所や店舗としての使用は禁じます、という意味です。

 

第4条


2項がないと、契約時にはなぁなぁで済んでも、解約時に翌月分として支払った賃料の日割り分が返ってこないことがあります。

3項は、「明日出ていきます」と言っても、解約を申入れた日から1ヶ月分の賃料は頂きますよ、という意味です。

4項は、「できる」とありますが、何の相談もなくいきなり翌月から賃料が1万円上がったりすることはないです。通知が来て、協議し、合意した上での話です。賃料を上げないと賃貸経営がやっていけないような状況になった場合に、相談できるようにこのような条項を入れています。


第5条

 

4項までは、第4条と同じです。

5項は、通常の借主負担分を規定したものです。

この他に、「安心サポートパック」等の名目で、緊急対応(鍵や排水口の詰まり等)のサポート料金を取られる場合があります。この辺は、申込みの際によく相談して、その費目は本当に必要なものなのかどうか確認しましょう。

「消毒代」「殺虫代」等の費用は、いらない旨申し出ることで負担しないで済む場合があります。

 

第6条


2項は、「敷金を払っているんだから、最後の1ヶ月分の家賃は払わないよ」とか言うことはできません、ということです。

3項は、明渡し後に返ってくる敷金を当てにして、その敷金を担保にして借金等をすることは認められません、ということです。

4項は、例えば賃料が1万円増額したら、敷金(1ヶ月分の場合)も1万円足りなくなるので、その分追加で預けてください(減額の場合はその逆)、という意味です。

5項は、敷金の返還方法が書かれているのですが、ここでいう「債務」というのは、特約に記載されている「室内クリーニング代」等の負担や、紛争防止条例に基づく説明書にある「壁や床のキズの修繕費用」等の負担のことです。


第7条 (反社会的勢力の排除)

→条文そのままの内容なので省略します。

 

第8条

 

2項は、条文通りです。貸主さんは、建物全体や他の入居者の環境を守る責任がありますので、誰が部屋を使っているのか把握しておく必要があります。この趣旨をご理解いただき、入居者が増加したり、変更になった場合には、大家さんに相談してください。

3項は、勝手に転貸するのは禁止という趣旨です。最近話題の「Airbnb」に部屋を登録するのも、無断でするのは禁止です。

4項は、第7条の補足です。

5項は、部屋の壁紙を変えたり、間取りを変えたりといった工事を要するような変更を部屋に加えてはダメですよ、という趣旨です。どうしても工事をしたい場合は、大家さんの書面による承諾を得てください。

6項は、近隣に迷惑行為をすることを禁じる条文です。注意しても夜中に騒ぎ続ける輩に退去を求める場合の根拠となります。

 

第9条

 

借主は、自分の所有物ではないからといって、掃除などをさぼっていい訳ではありません。普通の人ならやるであろう通常の掃除は義務といえます。例えば、冬期サッシの結露を一度も拭かずに放っておいて黒カビや木枠の腐食を発生させた場合等に追加の修繕費用を請求される場合があります。

 

第10条 (通知義務)

→条文そのままの内容なので省略します。

 

第11条

 

当条文は、建物全体の機能を保つための修繕等が必要となった場合に、協力してくださいという趣旨です。

2項は、例えばガラスを間違って割ってしまった場合などは、借主の負担での修繕となります、という趣旨です。

3項は、電球が切れたから取り替えた等の軽微な修繕については、わざわざ大家さんに断らなくてもいいですよ、という意味です。

 

第12条 (解除)

→長いので条文の転載は省略します。
 
この条文の大切なところは、「催告」の部分です。借地借家法では、催告なく一方的に貸主側から解約することを禁じています。
また、多くの賃貸借契約書では、「遅延額が賃料等の2ヶ月分以上」となった場合に解除、と定めています。
その他は、条文に記載の通りなのですが、2項3は、「1ヶ月以上大家さんに連絡しないで不在にすると解除」ということなので、注意が必要です。
4項は地震等で建物が倒壊した場合等の取り決めです。
 
第13条
 
「1ヶ月」というのは、借地借家法第38条5項に「建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。」という一文があることから、ほとんどの賃貸借契約において採用されています。「1ヶ月」よりも長い予告期間を求められた場合は、交渉してみるといいかもしれません。ただ、「1ヶ月」以上が無効という訳ではありません。「2ヶ月」とした契約書も目にしたことがあります。(判例から3ヶ月超だと無効となる可能性が高いと思われます。)
また、貸主は解約の申入れがあった日から、次の入居者を探し始めます。なので、解約の撤回を申し出ても受理してもらえない場合があることにご注意ください。
 
第14条
 
2項は、借主のミスや過失によって付けたキズ等は、借主が費用負担してください、という趣旨です。
3項は、上記のキズ等を借主が直さなかった場合は、貸主が修繕しますが、費用は借主に負担してもらいます、という意味です。
4項、5項は、条文の通りです。
 
第15条 (立入り等)
第16条 (解除通知等の到達等)

→条文そのままの内容なので省略します。

 
第17条
 
2項では、「倍額」になっていることに注意してください。
3項は、騒音問題等が生じた場合に、勿論大家さんにも知らせてもらいたいですし、大家さんが関わらないことも考えにくいですが、大家さんには責任がないですよ、という趣旨です。
 
第18条
 
借主側からの解除申入れや契約期間満了による解約の場合は、立退料や引越代等を貸主に請求することは認められません。
但し、貸主側から解除を申入れた場合は、相応の金員が支払われるのが通常です。
 
第19条 (連帯保証人の責任)
第20条 (協議)
第21条 (管轄裁判所)

→条文そのままの内容なので省略します。


第22条 (特約)
上述の通り、この部分は一字一句漏らさず読み込みましょう。(他の条文も、ですが)
 
賃貸その他条文
 

[1] (禁止事項)

「転貸すること」「犬・猫その他の動物を飼育すること」「楽器を演奏すること」

等を羅列しています。上記以外では、「共用部分に物品を置くこと」「危険物・過重量物・衛生上有害なもの、その他近隣から苦情の出るおそれのある物品を持ち込むこと」「共用部分に看板・ポスター等の広告物を掲示すること」「表札に契約者と異なる表記をすること」「石油ストープを使用すること」「大音量でテレビ・ステレオ等の操作をすること」「近隣の住戸に迷惑または不快を与えること」等々が並んでいると思います。


[2] (抵当権設定がある場合)

「本契約締結前に本建物に設定された抵当権または根抵当権が存在し、万一、当該抵当権等に基づく不動産競売手続により第三者が本件建物の所有権を取得したときは、買受人に所有権が移転された日から6ヶ月以内に本件建物から退去せざるを得ず、買受人に対して敷金返還を請求することができない場合があることを了承する。」

等を謳うものです。平成16年4月に施行された民法改正により、「短期賃貸借の保護の制度が廃止された」ことで、賃借人は競売の買受人に対抗できなくなりました。賃貸経営をしている建物に抵当権がついているのは普通なので、これはもう運次第です。残念ながら。

※「短期賃貸借の保護の廃止」に関して分かりやすく説明してくれているページはこちら

 
 
賃貸特約

 

[1] (短期解約禁止)

「契約開始日から1年未満で解約すると賃料1ヶ月分の違約金が発生します。」

等を謳うものです。礼金が「0(ゼロ)」の物件でよく見掛けます。また、フリーレント(入居後○ヶ月間の賃料が無料になる契約)の場合は、フリーレント期間に応じて、数ヶ月の違約金になる場合があります。

 

[2] (退去時室内クリーニングの借主負担)

「退去時は、賃貸人指定業者によるハウスクリーニング等を行い、その費用○○円は借主負担とする」

等を謳うものです。「賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書」に記載し、契約書には書かれていない場合もあります。これも、「常識の範囲内」かつ「事前に承諾したのであれば」問題ないと判断されています。(東京地方裁判所判決 平成21年9月18日等)

これも本当の本来的には貸主の負担の筈です。ただ、常識的に、借主は入居した時と同等にきれいに掃除して部屋を返すものと考えられます。その掃除の程度を判断するのは非常に難しいので、業者に頼みましょう、という話です。

ただ、ハウスクリーニングが入るからといって、余りに散らかし放題、汚し放題で退去されるのもお勧めできません。人の縁はどこで繋がるか分かりませんから。

※業者並みにきれいにする必要はありませんが。


[3] (鍵交換費用の借主負担)

「入居前に鍵及びシリンダーを交換し、その費用○○円は借主負担とする」

等を謳うものです。「賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書」に記載し、契約書には書かれていない場合もあります。これも、[2]と同様、「常識の範囲内」かつ「事前に承諾したものであれば」問題ないと判断されています。(東京地方裁判所判決 平成21年9月18日等)

国土交通省が示している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の「別表1 損耗・毀損の事例区分(部位別)一覧表」の「設備、その他(鍵など)」には、「鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)」は、「賃貸人の負担」とされています。

ですが、これも慣習として、借主様の安全のために替えるのだから、借主様に負担して頂こう、ということになってしまっています。
オーナー物件などでは、鍵交換費用を請求されないケースも結構あると思います。
納得いかなければ、交渉するか、その物件を諦めるか、です。
※ただ、現在募集中の物件の7割以上が鍵交換費用を請求しているという話を聞いたことがあります。鍵交換費用を請求しない物件は少数派です。